活断層は、地震を起こす可能性のある地盤のずれのことです。地下3〜10km程度の地中にある活断層がずれることによって地震が起こります。
この地中の活断層は、普通は地上にまでずれは届きません。従って、普通はこれらの活断層が見えないのです。ただ、大きな地震(マグニチュード6.5〜6.8以上)が起きると、このずれが地表にまで出てくることがあります。この地表に出てきたずれを、一般的には活断層と呼んでいます。
日本は地震国であり、この活断層について、古くから様々な研究や調査がなされてきました。航空写真を読み取ったり、地面に穴を掘ったりして、活断層の情報をいろいろ集めてきました。これは、地表にまで現れてきた活断層の情報を知ることで、地震を起こす地中の活断層の情報を知ることが目的です。
なお、地表に現れる活断層は大きな地震を引き起こしますので、しっかり調査しなくてはなりませんが、地表に現れてこない活断層も重要です。
火山について、活火山、休火山、死火山というように、その活動性から呼び方を変えています。活火山は、今でも噴火を繰り返している桜島や霧島岳のようなものです。一方、活断層は、常に動いている断層はありませんので、過去に繰り返し動いたことがあり、また、将来にわたっても動く可能性のある断層のことを言います。火山になぞらえると休断層と言った方が良いかもしれません。
繰り返し動いている断層の証拠を捕まえるためには、断層が動いた後に、堆積した地層を調べたり、ずれている地層の年代などを調べることなどが行われます。断層の活動性を評価することで、次に動く可能性のあるリスクを適切に評価できるからです。
なお、この地震を起こす活断層のほかに、活断層が動くことによって、周りが影響を受けて、地割れが起きたり、ずれが起きることがあります。これは、活断層によって引き起こされるずれで、副断層などと言われることもあります。
活断層は、強制的に地面が変位します。トンネルや建物があると、場合によっては大きな食い違いが生じ、壊れることがあります。このため、活断層のリスクはしっかりと評価しなくてはなりません。
日本のようにあちこちに活断層が走っていると、そこを避けてトンネルを掘ったり道路を作る事は困難です。昭和初期に、熱海と三島の間に、丹那トンネルを掘削する工事が行われていました。ちょうどその時に、北伊豆地震と呼ばれる地震が起こり、丹那断層が動きました。工事中だったのですが、トンネルの中では2.4メートルもの食い違いが生じました。
一方、地表にも、様々な地割れが生じましたが、それは小さな段差でした。最も大きな段差は、箱根神社のあたりで観測された30cm程度でした。丹那断層の活動性は、比較的高いと考えられていますが、おそらく、あと500年以上は動かないと思われますので、新幹線に乗っていてもあまり気にすることはないと思います。
台湾やトルコで起きた地震では、この地震を起こした活断層の上に建物があり、大きな損傷も経験しています。ただ、元々あった活断層の上に建物があったために、地割れはその建物を避けて別の場所にできたような事例もありました。活断層が動くことを前提に、パイプラインの設計をしたり、ダムの設計を行っている例もあります。ずれが起きても、それを吸収して壊れないような設計が取られています。
なお、活断層の活動性は、短いものでも1000年程度から、長いものは数万年と考えられています。活断層が動く危険性は、ゼロではありません。しかし、そのリスクを正しく理解し、対策をとる事が重要なのです。
上述のように、地震によって地上にずれを起こす活断層のほかに地上には様々な地盤の割れがあります。地盤ができたころの非常に古い時代の割れから、箱根神社で説明したような地震によってできる割れもあります。地震活動によって、何もないところにもずれが生じることもあります。
目の前に見えている割ればかりに注目することは間違いであることがわかります。これらの割れやずれを、地震による活断層と混同すると正しい議論ができなくなります。
地震や活断層に伴う割れはどこにでもできる可能性があります。箱根神社で見たように、その確率はゼロではありません。アメリカや日本において、過去の地震とその時に発生したずれの記録を調査し、どの程度のリスクがあるかを評価する事が行われています。アメリカの原子力規制委員会は、活断層によって引き起こされるずれによるリスクを定量的に評価して、問題ないことを確認しています。
地震を引き起こす活断層が動く確率も1000年から数万年に1回で比較的小さいために、さらに、その活断層によって引き起こされるずれがある特定の場所で起きる確率は、非常に小さなものになります。場所にもよりますが、隕石が落ちてくる確率と同じ程度、もしくはそれよりも小さくなります。
では、ほとんど危険性はないのでしょうか? 地震を起こす活断層以外であれば、上述のように危険性は小さいといっても良いと思います。しかし、人間の知識には限りがありますので、危険性が小さいから何もしなくてよいということは間違いであることが、東日本大震災の教訓の一つです。
福島第一原子力発電所を襲った津波についても、津波の研究を進めることと、万一大きな津波が来た時の対策を事前に考えていれば、事故は防げた可能性が高いのです。つまり、活断層が動くことにより、その近傍の地盤がずれることについて研究を進めていくことと、万一ずれた場合に対する対策を考えておくことの2つを実施することが必要です。
一つ目の活断層の研究については、地震を引き起こす活断層について古くから研究が進められてきています。この活断層だけではなく、活断層によって引き起こされる地盤のずれに関する研究が進められることを強く期待します。
一方、二つ目の万一地盤がずれた場合の対策について、原子力発電所全体をシミュレーションコードによって評価する研究が進められています。「京」のような大きなコンピュータを使わなくても、最近はハードウエア、ソフトウエア共に大変発達してきており、精度良く応答が解けるようになってきています。
これらによって、ある程度のずれであれば、原子炉の安全に大きな影響がないことなどもわかってきています。この2つの研究を推進することによって、より安全な原子力発電所や、より安全な建物の建設につなげて行くことができると考えています。
原子力規制委員会は、原子力発電所や放射線を扱う施設などの安全が確保されていることを科学的に監査し、かつ監視することが存在意義です。しかし、残念ながら、活断層をめぐる議論は、全く科学的ではなく、原子力規制委員会の存在意義自体を否定する内容になっているのではと思います。まともな科学者なら、議論が論理的でないことがすぐにわかりますので、逆に破砕帯は問題ないと思ってしまう人が出ることを危惧しています。
上述のように、地震を引き起こす活断層のリスクは比較的大きく、またその周りでずれが生じるリスクは活断層よりも小さいですが、ゼロではないのです。科学的に、活断層やずれのリスクを考えることが重要で、このために、研究を推進することが重要なのです。
| 科学的に活断層やずれのリスク考えることが重要 |
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