原子力発電所では、ウランの核分裂によってエネルギーを作り出します。核分裂によって、人工的な核種が数多く作り出され、これらが一般的に不安定であるために、大量の放射線と微小な熱を継続的に発生するようになります。この過程でウランよりも重たい物質も作り出されます。これらはMA(マイナーアクチノイド)と呼ばれますが、一般的に半減期が非常に長いものです。核分裂生成物やMAなどの放射性物質を長期にわたって管理することが必要になります。
通常の原子力発電所では、これらの放射性物質を含んだ使用済燃料が高レベルの放射性廃棄物です。一方、使用済燃料の中には、核分裂をしないウラン238が核変換することによって作られる大量のプルトニウム239が存在しています。使用済燃料を廃棄物と考える考え方もありますが、大量の燃料(資源)が含まれていると考えることもできるのです。このため、この使用済燃料を再処理し、プルトニウムを取り出して燃料として再利用することが考えられました。これは、使用済燃料をリサイクルして用いることにほかなりません。このような形でウラン燃料を何回も用いることを、核燃料サイクルと呼びます。
発電所で核分裂をした使用済燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、そのプルトニウムとウランを混ぜた燃料を新たに作って、その燃料を発電所でまた燃やす、という形で、燃料を発電所、再処理工場、燃料工場、発電所とぐるぐる回すことによって、ウラン燃料を有効活用しようという戦略です。核分裂するウラン235は、天然ウラン中に0.7%しか含まれていませんが、核燃料サイクルを活用すれば、核分裂しない99.3%のウラン238も燃料として利用できるため、非常に長期間、安定なエネルギー源になることが期待されます。資源の少ない日本では、この核燃料サイクルによって、新たに資源を生み出すことがエネルギー安全保障上重要であると考え、核燃料サイクルを戦略として推進してきました。
なお、再処理工場で使用済燃料からプルトニウムを抽出する後に廃棄物が残ります。この廃棄物に、先ほどのMAと呼ばれる、厄介な元素が大量に含まれています。また、大量の放射性物質も残ります。この残った廃棄物は、安定なガラスの中に閉じ込めることで、10万年以上にわたって安全に廃棄することを行います。これが一般的には高レベル廃棄物と呼ばれるものです。
再処理をしなくても、使用済燃料そのものが高レベル廃棄物です。再処理をすると、プルトニウムなどを取り出した残渣としての高レベル廃棄物が残ります。いずれにせよ、これらの廃棄物は、長期にわたり、ヒトや動物の活動から隔離された場所に保管しておくことが必要になります。
人間がエネルギーを利用しようとすると、石炭や天然ガスを燃やした後には、大量の二酸化炭素が廃棄物として出てきます。核分裂でウランを燃やした後には、高レベル廃棄物が出てきます。化学反応や核反応を用いてエネルギーを得ようとすると、廃棄物が出てきてしまいます。ウラン1原子あたりの核分裂エネルギーは、炭素1原子が酸化(燃える)して出すエネルギーの百万倍です。つまり、同じだけ電気を作ったとして、ウランの廃棄物は、炭素の廃棄物の百万分の1にしかなりません。これは大きな差です。
今までは、二酸化炭素を大気中に捨ててきました。少量であれば問題ないと思われていましたが、ご存じのように温室効果ガスとして、地球温暖化や異常気象を招いていると考えられています。このため、回収して管理することが必要になってきました。一方、ウランの廃棄物は非常に危険なため、回収して管理することが当初から考えられています。原子力発電所の炉心は直径4メートル、高さ4メートル程度の円筒形をしています。この中に燃料が入っていますが、3年程度使われます。つまり、30年間運転したとすると、4メートルの円筒10個分程度の使用済燃料が出ることになります。ちょうどテニスコート1つ程度の大きさになるでしょうか。30年分の電気を得た使用済燃料がテニスコート1つで済むのです。石炭や天然ガスの廃棄物はそれでは済みません。その100万倍ですから、気の遠くなるような二酸化炭素を出すことになります。
さて、テニスコート1つと言っても、この使用済燃料を厳重に管理しなくてはなりません。非常に放射線量が高いことと、発熱をしているために、まずは水中で保管することになります。水は放射線を良く遮蔽しますので、水中においておけば安全です。また、水は良く熱をとりますので、使用済燃料も良く冷えるので安全です。10年も経つと、発熱はかなり減ってきますので、空冷でも問題なくなります。厳重に密閉された空冷容器の中に入れて管理することになります。この状態を乾式中間貯蔵と言います。今、青森県むつ市に建設中の中間貯蔵施設は、原子力発電所から出てくる使用済燃料を、乾式中間貯蔵して保管するために準備されています。
前述のように、これらの使用済燃料を再処理することで燃料に再利用するウランやプルトニウムと、高レベル廃棄物が出てきます。高レベル廃棄物の量は、使用済燃料よりもさらに少なくなります。この危険な高レベル廃棄物は、地中深くに埋めてしまうことが考えられています。40億年の歴史を持つ地球にとって、10万年(4万分の1)は一瞬です。地殻変動や大陸の移動などは、1000万年のオーダーの話です。地震は毎日のようにおきますが、地中深くで地殻が壊れるのは1000万年以上かかります。地殻変動や活断層などが明日動かないという保証はありませんが、地球規模で考えれば、ほとんどの地殻は、10万年動いていません。日本のような地震国であってもです。
地層を調べ、過去の歴史を調べることで、地層処分に適した場所はいくらでも見つけることが可能です。これは、廃棄物の量が比較的少ないので、処分場の面積が小さくて済むということも一つの理由です。もちろん、処分場の選定は慎重に慎重を重ね、長期の安全が確認される場所を選ぶことが必要です。
核燃料サイクルによって再処理を行うと、燃料が生まれるのは良いことなのですが、高レベル廃棄物ができてしまいます。また、大変お金がかかります。このため、再処理をせずにそのまま使用済燃料を廃棄しようとする提案があります。直接処分と呼ばれます。処分場の面積は大きくなりますが、そのまま捨てるので比較的容易と考えられています。しかし、使用済燃料の中にある燃料がもったいないことと、万一、掘り返されてプルトニウムを抽出すると原爆を作ることができるので、掘り返されない様な管理を行うことなど、いくつかのデメリットもあります。
世界で、最終処分場が決まっているのは、北欧のスゥエーデンとフィンランドです。イギリスも候補地が絞られてきています。北欧は比較的安定な大地であることや、国民の理解が進んでいることなどもあります。福島事故を受けた日本においては、国民の理解を得ることはハードルが高いと思いますが、今まで安いエネルギーを享受し、これからもエネルギーを享受していこうとしている我々にとっては避けては通れない課題です。世界中で原子力発電がおこなわれれば、世界中で廃棄物が出てきます。上記のように、廃棄物の量は比較的少なく、また、技術的には管理が可能であると考えられています。地中埋設の時間にとって、10万年はあっという間です。
また、高レベル廃棄物に含まれるTRUを核分裂させることなどにより、長半減期の物質を短半減期の物質に変換させることで、管理期間を10万年から300年程度に短くする研究開発も進められています。300年であれば、我々及び子孫でも、ある程度責任をもって直接管理できる期間かもしれません。
| 避けて通れない解決すべき課題 |
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