原子力なんでもQ&A(20) 

岡本孝司

エネルギーレビュー 2014年4月号50ページより転載

もんじゅはどうなっているの


Q:もんじゅの現状は?

福井県敦賀市にある高速増殖炉「もんじゅ」は長いこと止まったままです。18年前に、2次系と呼ばれる原子炉とは直接繋がっていない冷却系配管でナトリウム漏れ事故を起こしたのち、長期にわたって止まったままでした。その後、様々な対策を整えて、試運転を再開しました。 しかし、燃料交換装置の単純な設計ミスによって、また長期停止になってしまいました。燃料交換装置のトラブルを解決した後に、震災が起きてしまいました。さらに、その後、原子力発電所の新しい規制が始まったため、現在は、長期停止中です。また、原子力の安全とは直接関係のない、書類上のトラブルが大量に発覚したため、さらに問題に拍車をかけてしまいました。

もんじゅは高速増殖炉の原型炉として開発が進められてきました。高速増殖炉とは、天然ウランの中に99%以上含まれる、燃えないウラン238と呼ばれる物質を原子炉の中であぶることにより、燃えるプルトニウム239に変換することで燃料を増殖することが、その特徴です。そのままでは、核分裂しない(燃えない)燃料を、核分裂する(燃える)燃料に変換することで、燃える燃料を増殖することを目的としています。

ウランの埋蔵量は100年分といわれていましたが、それは、0.7%含まれるウラン235を使った場合です。高速増殖炉によって、残りの99.3%のウラン238を燃やすことができれば、100倍も埋蔵量が増えることになります。つまり、理論上は1万年分の埋蔵量になります。このため、資源の少ない日本にとっては、夢の原子炉と考えられていました。世界でも、資源の有効利用を図ることができる高速増殖炉は重要と考えられていて、アメリカやフランスをはじめ世界各国で開発が進められていました。

しかし、その技術開発にコストがかかることなどから、現在、公式に開発を続けているのは、ロシア、中国、インド、日本などの限られた国々です。福島の事故後も、ロシアや中国では実用化に向けた開発が進められています。北京の西には、ロシアと共同で作られた実験炉も動いています。

Q:なぜもんじゅは止まっているの?

現在止まっているのは主に3つの理由からです。一つは、燃料交換装置の設計ミスにより、燃料を落下させてしまうトラブルがあったためです。これは、改修工事を実施し、現在では復旧しています。

二つ目は、福島の事故を受けて、規制基準が新しくなりました。しかし、軽水炉と比べて、ナトリウムを冷却材として用いるもんじゅでは、その特徴が全く異なります。例えば、冷却材の圧力はほぼ大気圧で、70気圧や140気圧といった高圧の水を使う軽水炉とは全く異なります。このため、自然対流を利用した除熱が可能で、福島のように電気が全くなくなった場合でも、自然対流によって崩壊熱を除去できるので、福島のような事故にはつながりません。一方で、ナトリウムは化学的活性が高く、軽水炉とは異なる事故を考えておかねばなりません。規制委員会は軽水炉で手いっぱいなことと、もんじゅのような高速増殖炉の専門家がいないため、基準作りを先送りしていることも一つの理由です。

三つ目は、福島事故の数年前に法律が新しくなり、各発電所で保全プログラムを作ることになりました。何万点もある機器の保守をどのように行うかということが書かれている書類です。当時、もんじゅは軽水炉の真似をしてプログラムを作ったことにより、原子力の安全には関係のない、不必要な保全も書類に記載してしまいました。不必要であっても、約束した保全を実施しないと法律違反になります。現場は不必要と判断し、先送りをしたのですが、書類上法律違反になり、結果として、改善を行うまで原子力発電所としての作業を停止するように命令を受けてしまいました。現在の法律は、原子力発電所の安全を確保することを目的としておらず、書類を整備することを目的としています。このため、その法律に違反したことは重大な約束違反です。それがたとえ原子力発電所を危険にする法律であっても、法律は法律ですので守ることが求められます。もんじゅの保全プログラムを、本当に原子炉の安全を高めるためのプログラムに改善することが必須です。

Q:もんじゅは危険なの?

 原子力発電所はもともと危険なものです。特にもんじゅのような新しい原子力発電所は慎重な上にも慎重に、安全を確認することが必須です。ナトリウムを冷却材で使うということも課題です。もんじゅの前に常陽という実験炉で多くの経験を積んでいましたので、ナトリウムの取り扱い自体の経験はありました。こちらも今は停止中ですが、安全に運転を続けてきた経験があります。

 フランスのフェニックスという、もんじゅと同じような高速増殖炉の原型炉も、30年以上、安全に運転を行っていました。既に止まっていますが、数多くの実験データを得ています。30年の間に30回近くのナトリウム漏れ事故を起こしていますが、それらの経験を蓄積し、より安全な原子炉の設計に反映されています。

一方、もんじゅでは、1回のナトリウム漏れ事故で18年止まってしまいました。実用化前の原型炉は故障することが必要です。小さな故障を繰り返して、経験を蓄積し、大きな事故に繋がらないようにしなくてはなりません。ところが、日本では小さな故障を許しません。このような風土においては、新しい技術を生むことは元来無理なのかもしれません。日本が欧米の技術を真似することが得意で新しい技術を生むことが不得意なのは、新しい技術を生むリスクを採ることができない風土なのかもしれません。

国の方では、アベノミクスに関連して、イノベーションを発展させようとしています。マスコミが、よくわからないインターネットや医療などの分野は、リスクが大きくても野放しなので、日本初の技術はどんどん進んでいます。しかし、原子力と関連した技術や、食品と関連した技術は、イノベーションを発展させることは日本では難しいのではないかと危惧します。

さて、新しい原子炉であったために、その設計においては、福島で経験したような燃料が溶けるという事故をあらかじめ想定し、その場合でも環境に影響が出ないことを確認することがなされていました。ある意味、現在の新規制基準を先取りしていたわけです。旧原子力安全委員会の文書において、(5)項に記載されていたため、5項事象と呼ばれています。 具体的には、福島で経験したような多重故障を仮定しても問題がないことを確認していました。この想定事象の場合、燃料は溶融し、さらに再臨界を起こして、大きな力を発生することまで考えていました。確率的には限りなく小さいのですが、それでも万一、炉心が溶け、さらに再臨界という非常に厳しい条件を考えています。再臨界によって発生する力をシミュレーションによって推定し、その力では原子炉容器が壊れず、放射性物質は原子炉容器の中に留まることを確認していました。 また、溶けた燃料を受け止める皿のようなものも設置し、さらに、自然対流によって空気冷却できることも確認していました。つまり、このような厳しい状況でも福島のように放射性物質を環境には放出しないことを確認していました。設計基準事象を大きく超えるような、想定外事象をあらかじめ想定していたことになります。

もんじゅは実は世界で最も安全で、また最も進んだ技術です。日本が止めても、中国やロシアでは開発がすすめられます。われわれの孫の時代に、中国製のもんじゅを輸入することを一部のマスコミは期待しているのかもしれませんね。

ナトリウム漏れから18年も止まっている

戻る