2月25日に経済産業省がエネルギー基本計画の原案をとりまとめ、政府原案として公開しました。ホームページにも報告書が載っています。日本はエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。水力発電等の国産のエネルギー源は、たったの4%にしかすぎません。一方で、日本人のエネルギー消費量は大量です。蛇口をひねれば、ふつうにお湯が出てきます。携帯電話も電気がなければただの箱です。生活に使うエネルギーだけではなく、産業を起こして、付加価値の高い製品を作り上げるにも、大量のエネルギーを必要とします。
一人当たりの消費エネルギー量と一人当たりの国民総生産は強い相関があります。国民総生産が増えるとエネルギー消費量が高くなってきます。一人当たりのエネルギー消費量が最も高いのはアメリカです。日本の倍以上のエネルギーを消費していますが、国民総生産も日本の1.5倍です。一方、中国の一人当たりエネルギー消費量は日本の半分以下ですが、国民総生産は1/3です。今世界平均がちょうど中国と同じあたりにあります。インドはさらに中国のそれぞれ半分程度になります。ご存じのように中国やインドは現在驚異的な発展を遂げてきています。中国の人口は、日本の約10倍ですから、それらの人々が日本人と同じだけエネルギーを消費するようになると、今の20倍のエネルギーが必要になります。
エネルギーは決して一か国のみで片付く問題ではありません。資源と食糧と水は、人々が生きていくために必須です。水以外を輸入に頼っている日本は、ある意味非常に貧弱な基盤の上に成り立っていると言っても過言ではないかもしれません。
さて、エネルギー基本計画は、このような我が国を取り巻く状況の中、将来にわたって安定的にエネルギーを供給するための国家戦略を示したものと言えます。その基本方針は、3E+Sと表されています。Sは安全(Safety)を表し、どのようなエネルギーも安全を確保する事を前提としています。3Eはエネルギー安定供給(Energy Security)、経済性(Economical Efficiency)、環境(Environment)を表し、これらを満足させるような最適解を目指しています。
残念ながら、全てを満足できる理想的なエネルギーというのは日本にはありません。このため、様々なエネルギーを使いつつ、多くのオプションを持っておくことが重要になってきています。
1年前に民主党が下野し、自民党が政権をとりました。民主党時代のエネルギー政策は、当初は原子力を50%に増やすというものでしたが、福島第一原子力発電所事故で慌てふためいて、原子力ゼロの掛け声のもと、非常にゆがんだ政策をとりました。電気代は時間遅れで値上がりします。この性質を利用し、自分たちの政権の間は、とにかく原子力発電所を動かさないことを目的にしました。おかげで、日本は毎年3兆円もの国富を海外に垂れ流すようになりました。今、実質上は20%程度高額の電気代を国民は支払っていますが、さらなる値上がりは避けられません。
自民党はアベノミクスにより、経済を活性化させることで、日本の借金を減らし、世界の信用を勝ち取ることに成功してきています。この方針を継続するためにも、3兆円の無駄な国費を捨てることを止めねばなりません。しかし、今回の基本計画では、このあたりの話があやふやになってしまったことが残念です。従来の域をあまり出ていません。新聞などでは原子力をベース電源とすることが注目されていますが、それ以外にも、水素社会を目的としたロードマップを作成することや、国民の理解を得るためのコミュニケーションを進めていくことなども記載されています。
日本は島国であり、そのエネルギー源のほとんどを輸入に頼っています。石油は半年ほど備蓄がありますが、天然ガスはその性質上備蓄が困難です。これに対して、原子力は潜水艦に使われていることからもわかるように、燃料補給をせずに、1年以上にわたって発電をし続けることができます。安定的に一定量を供給することが出来るという優れた特徴を持っています。
また、原子力エネルギーは相対的にコストが安いのです。福島第一原子力発電所事故の修復にかかる費用や、高レベル廃棄物の廃棄に関する膨大な費用を加えたとしても、他の燃料に比べて安く発電ができます。これは、一つの原子から得られるエネルギーが、化学反応(燃焼)に対して、核反応(核分裂)は100万倍も大きいことも理由の一つです。同じエネルギーを得るのに、天然ガスなどに比べて100万分の1のウランで足りるのです。大規模な補償や追加経費を考えても、値段は大きく変わらないのです。
なお、アメリカでは、さらに安いシェールガス革命がおき、いくつかの古い原子力発電所は廃止の道を選んでいます。日本は安いシェールガスを輸入しても輸送費が莫大になるため、少し価格は下がりますが、大きく安くはならないのが課題です。
一方、現在その主流となっている天然ガスは、日本が輸入している国が多様化しており、どこかの政情が不安になったとしても、資源が途絶える危険性は少ないというメリットがあります。しかし、原子力発電所を動かしていない日本は、価格が高くても天然ガスを買わねばなりませんので、産出国から見ると良い顧客になっています。また、大量に輸入し続けなくてはなりませんし、輸送コストが高いことが課題です。大型の天然ガスタンカーひとつ分を、ひとつの発電所で、たった2日で燃やしてしまうくらいに大量に輸入しています。熱効率が比較的よいですが、それでも大量の二酸化炭素を排出します。
風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーは、比較的安全で、環境にも影響が少ないですが、その発電が天気任せなために安定的な電力を得ることができません。ドイツなどでは、発電電力量が不安定に大きく変動することを担保するために、石炭火力発電所を作っています。一般家庭の蛍光灯がちらつくくらいはかまわないかもしれませんが、産業用の電力が変動すると、製品を作ることができなくなります。これを防ぐために、負荷変動に追従性がある石炭火力をバックアップで持っているのです。ドイツは石炭が自国で産出されるので、石炭が使われています。太陽光や風力が普及するためには、負荷変動を吸収できる蓄電システムの開発がカギとなるでしょう。
それぞれ、良いところと悪いところを持っていて、オールマイティな資源は残念ながらありません。これらの資源をうまく組み合わせて、良いところを伸ばしつつ、悪いところを補完することによって、電源を確保することが必要になります。
電源には主として、水力や原子力等の安定的に発電を行うことができる安価なベース電源と、天然ガスや石炭等の負荷変動が可能で比較的安価なミドル電源、石油や揚水式水力等の負荷変動が容易であるが比較的高価なピーク電源があります。これらをうまく組み合わせて電源を確保していきます。まだ、日本では、太陽光や風力などは小さすぎて組み合わせの中にも入ってきません。将来的には、これらもピーク電源に位置付けられていくことが期待されます。
日本の経済発展を支え、様々な国際情勢の変化にも柔軟に対応するため、原子力発電を当分の間有効利用することは、合理的な判断であると考えます。シェールガス革命のようなイノベーションが起こると、状況を変えることも可能です。ただ、シェールガスでは二酸化炭素は増え続けるので、将来の世代につけを回すことになります。やはり、様々なオプションを用意しておくことが、重要な戦略です。
| 安定的に発電できる安価なベース電源 |
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