新聞にはあまり大きく書かれていませんが、現在、日本原燃株式会社に関する議論が経済産業省で進んでいます。日本原燃は原子燃料サイクルの中核となる企業です。原子燃料サイクルの実施を確実なものとするために、国の関与を強めた認可法人を設立し、その認可法人の下に日本原燃を置くことなどが議論されています。なお、原子燃料サイクルのことを、核燃料サイクルと言うこともあります。同じものです。さて、原子燃料サイクルはなぜ必要なのでしょうか? なぜ、国が積極的に関与する必要があるのでしょうか?
原子燃料サイクルの必要性を議論するためには、日本全体のエネルギー資源に関する現状を考えなくてはなりません。今、日本のエネルギーは、そのほとんどを輸入に頼っています。国産のエネルギーは、水力発電、風力発電、太陽光発電など、ほんの一部にすぎません。石油、石炭、天然ガス、LPガス、ウランなど、ほとんどのエネルギー資源は日本国内では算出しないために、海外から輸入する必要があります。
40年前に、オイルショックがありました。中東からの石油の輸入が途絶えただけで、日本はエネルギー不足に陥り大パニックになりました。これらの反省から、石油に依存しないエネルギー資源の利用が推進されてきました。石炭はオーストラリアなど政治的に安定な国々で産出され、その輸送経路も比較的安定な国々を通過するとともに、安価なため、活用が進んでいます。
原子力発電は、少ない燃料で大量にかつ安定に発電ができるとともに、エネルギーセキュリティ確保の点からも非常に優れたエネルギー源であり、活用が推進されてきました。近年は太陽光などのいわゆる再生可能エネルギーが少しずつ増えてきていますが、それでも日本全体のエネルギーを考えると、まだまだ足りません。
原子力発電所で、ウランの核分裂によって発電をすると、その副産物でプルトニウムができてきます。プルトニウムは天然にはほとんど存在しませんが、ウランと同様に核分裂をする物質です。つまり、原子力発電所は、電気を作るだけではなく、プルトニウムを作り出す鉱山としての役割も持っています。使用済燃料から、燃え残ったウランやプルトニウムを回収してやれば、再び原子力発電所の燃料として利用できます。つまり原子力発電所がプルトニウム鉱山になります。資源小国の日本としては、電気も作れて、鉱山にもなる一石二鳥の原子力発電を推進する大きな魅力があります。
原子燃料サイクルとは、この鉱山としての性質を利用した燃料の有効利用を基盤としています。海外のウラン鉱山で算出されたウランを原子力発電所の燃料に加工します。ウラン燃料を燃やして発電をするとともにプルトニウムを生産します。燃え終わった使用済燃料を再処理することで、プルトニウムを取り出します。取り出したプルトニウムとウランを混ぜて原子力発電所の燃料を作ります。この燃料を燃やして発電をするとともに、またプルトニウムを生産します。
これが繰り返されれば、燃料は輪のように、加工、発電、再処理をぐるぐる回ることになりますので、これを原子燃料サイクルと呼んでいます。ぐるぐる回っている燃料に、ウラン鉱山からの燃料を少しずつくべて、発電が進んでいくような形で資源を有効利用することになります。なお、再処理した後には、いわゆる高レベル廃棄物が出てきます。この高レベル廃棄物は地層処分され安全に隔離されます。
資源小国である日本は、国内に大規模な鉱山を持つことができる原子燃料サイクルを推進してきました。安定なエネルギー資源は、国の持続的な発展に非常に重要です。技術的な課題が、まだまだ山積していて、原子燃料サイクルを回すのは、まだかなり先になりそうな状況です。サイクルには、大まかに燃料加工、発電、再処理の3つのプロセスがあり、また、再処理に伴い発生する高レベル廃棄物の問題があります。
再処理については、海外からの技術導入などを元に、核燃料サイクル開発機構(現 日本原子力開発機構)によって研究レベルの技術は確立されました。これを商業レベルの大型設備に拡張したものが、青森県六ケ所村にある日本原燃の工場です。大型化、商用化に伴う、様々な技術的課題が出てきており、間もなく完成に近い状態ですが、現在も完成していません。技術的な課題はほぼクリアしており、後は、福島第一原子力発電所事故を受けて改訂された新規制基準に適応することが、原子力規制委員会で確認されれば、稼働することになります。
当初予定よりも大幅に遅れているため、使用済燃料が大量にたまってきており、再処理を進める必要があります。なお、現在のプラントが稼働したとしてもその容量が限られており、現在日本にあるすべての使用済燃料を再処理するためには、第二再処理プラントの建設が必要になります。
次に発電ですが、プルトニウムを効率的に燃やすためには、「もんじゅ」のような高速増殖炉が必要になります。高速増殖炉の燃料として、プルトニウムが混合されたMOX燃料が用いられます。このため、高速増殖炉の開発が、原子燃料サイクルの核になります。しかしながら、ご存じのように、もんじゅはまだ稼働しておりません。試運転中に、ナトリウム漏えい事故や、燃料交換装置落下事故などを起こし、現在も止まったままです。また、もんじゅは原型炉であり、この先、実証炉の建設による技術実証を経て実用化につなげられる予定です。
もんじゅでプルトニウムを消費することが難しくなってきているため、現在は、軽水炉においてプルトニウムを混合したMOX燃料を燃やし始めてきています。これは、プルサーマルと呼びます。福島第一の事故で軽水炉もなかなか再稼働が進みませんが、少しずつ再稼働が進められると、MOX燃料も使われ始めると考えられます。軽水炉では、プルトニウムをあまり消費できませんので、やはり本命は高速増殖炉です。特に高速増殖炉は、その名の通り、プルトニウムやウランを燃やすとともに、燃やした以上のプルトニウムを生産できる原子炉です。原子燃料サイクルの核となる技術です。高速増殖炉の実証が、原子燃料サイクルの完成の大きな柱です。
次に燃料加工についてですが、プルトニウムを混ぜたMOX燃料の加工技術は完成しています。現在、日本原燃の再処理によって抽出されるプルトニウムを用いたMOX燃料の加工工場を六ヶ所村に建設する計画があり、やはり規制委員会によって審査が行われている途中です。なお、現在の再処理技術は、軽水炉で燃やされたウラン燃料の使用済燃料の再処理です。高速増殖炉やプルサーマルで燃やされたMOX燃料の使用済燃料の再処理技術は、これから開発が進められて行きます。原子燃料サイクルが回ると、MOX燃料が主流になりますので、この技術開発が重要となります。
最後に、再処理によって発生する高レベル廃棄物の問題です。高レベル廃棄物は、ガラス固化し、地層処分をすることが最も安全で、技術的にも可能な処分方法です。世界中で高レベル廃棄物の処分に関する技術開発が進められ、ほぼ技術的には問題ない状況にあります。一方で、具体的に地層処分をする場所を選定する必要がありますが、この場所選定が非常に困難な状況になっています。放射線に対して、風評被害が非常に起きやすい状況にあり、物理的に安全であっても、ほぼ確実に、社会的に危険な状況におちいります。このため、場所の選定は現実的に難しく、いわゆるNIMBY(Not in my back yard)状態です。しかし、場所を選定することは、将来にわたり持続的な発展を子孫に残すためにも重要な課題です。
ある意味、安定で安い電力によって、発展を享受してきた現世代のつけを、次世代に残す形になるのではなく、逆に、次世代に資産の形で残すことができるよう、原子燃料サイクルの確立を進めるとともに、高レベル廃棄物処分の場所選定の課題についても進めて行くことが重要であると考えています。
| 燃料の有効利用を図ることが目的 |
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