原子力なんでもQ&A(44) 

岡本孝司

エネルギーレビュー 2016年4月号56ページより転載

プルサーマルとは


 新規制基準が制定されてから3番目の原子力発電所として、1月末に関西電力高浜3号機が再稼働しました。この高浜3号機は、プルサーマル発電をしています。プルサーマルとは何で、なぜプルサーマルが必要なのでしょうか?

Q:原子力発電の仕組みは

 原子力発電所は、ウランの核分裂で発生する膨大な熱エネルギーを使ってお湯を沸かし、蒸気の力でタービンを回して電気を作ります。燃料は、ウランの酸化物であるセラミックスで作られています。天然のウランには、中性子の数が少し異なる、ウラン235とウラン238が含まれています。日本で動いている軽水炉では、ウラン235の割合を3〜5%に高めた燃料が使われます。原子炉に使われる燃料は、当初はウランだけなので、ほとんど放射線はありません。

 ところが、原子炉の中で、ウランが核分裂を繰り返すことで、様々な放射性物質が作られていきます。ウランの原子核が2つの原子核に分裂すると、新たにできた2つの原子核は、通常不安定なので、安定な原子核になろうとして放射線を放出するのです。これは核分裂生成物と呼ばれて、安全に管理することが必要になります。

 核分裂生成物以外にもさまざまな物質が原子炉の中で作られます。その一つが、ウラン238が中性子を取り込んでできるプルトニウム239です。原子力発電所で発電すると、同時に、大量のプルトニウム239が生産されます。プルトニウム239はウラン235と同様に核分裂を起こしやすい物質です。つまり、発電と同時に燃料を作っているのです。

 運転開始時は、プルトニウムはありませんので、核分裂を起こしているのはウラン235です。運転を継続すると、どんどんプルトニウム239が生産されてきます。そうすると、プルトニウムも核分裂します。3年くらい運転すると、発電の30%程度は、原子炉の中で生産されたプルトニウムの核分裂の寄与になります。原子力発電所の設計では、このようなプルトニウムの寄与についても、ちゃんと評価をして、安全性を確認しています。

 どのような原子炉でも、運転すると、原子炉の中ではプルトニウムが生産されます。様々な原子炉が設計されていますが、使ったウラン燃料以上のプルトニウムを生産するのが、高速増殖炉で、「もんじゅ」はその原型炉と呼ばれる研究炉です。日本で運転されている軽水炉でも、運転と同時にプルトニウムが生産されていますが、その量は高速増殖炉ほど多くありません。しかし、軽水炉で燃やされ、使い終わった使用済燃料には、プルトニウムが含まれています。この使用済燃料は、再処理され、燃え残ったウランとプルトニウムが取り出されます。

 再処理を行う理由は、燃料であるプルトニウムを取出すだけではなく、高レベル放射性廃棄物を少なくして、処分を容易にするという目的もあります。取り出されたプルトニウムは原子炉の燃料になります。なお、プルトニウムは、原爆の原料にもなりますので、国際機関であるIAEAが査察をして、原爆には絶対に使わないことを保証しています。ご存じのように北朝鮮は、この査察を断り、実際に原爆を作ってしまいました。日本では、プルトニウムは原子力発電所の燃料以外には使わないことを、国際的に約束するとともに、再処理の過程で、必ずウランと混ぜて、物理的に原爆には使えないような形で管理しています。

Q:MOX燃料とは何ですか

 さて、これらのプルトニウムを含んだ燃料は、もんじゅなどの高速増殖炉の燃料として利用する予定でした。ウランとプルトニウムの混合燃料で、UO2とPuO2の混合酸化物燃料であることから、混合酸化物(Mixed OXide)の頭文字をとり、MOX燃料と呼ばれます。原子燃料サイクルは、燃料を生産しながら発電する「高速増殖炉」と、プルトニウムを取り出すとともに高レベル放射性廃棄物を少なくする「再処理」を組合せて、数百年にわたって、大量のエネルギーを算出する仕組みでした。残念ながら、もんじゅの事故によって、高速増殖炉の開発が遅れています。一方、もう一つの柱である再処理は、度重なる延期が続いていますが、間もなく完成するところまで来ています。また、今まで、軽水炉を運転してきたことによって大量に発生した使用済燃料は、海外で再処理され、大量のプルトニウムを日本は持っています。

 日本は、再処理によって得られたプルトニウムを原子力発電所の燃料(MOX燃料)として使う以外には、決して他の用途には使わないということを、国際的に約束しています。今のままでは、MOX燃料としてもんじゅなどを使って発電するという国際約束が果たせていません。

 一方、上述のように、普通の軽水炉でもプルトニウムは核分裂をしています。そこで、MOX燃料を軽水炉で燃やして、プルトニウムを消費しようということになりました。これをプルサーマルと呼びます。高速増殖炉がエネルギーの高い(高速な)中性子を利用するのに対して、軽水炉がエネルギーの低い中性子(熱中性子と言われます)を利用することから、熱中性子の英語名(サーマルニュートロン)とプルトニウムを組合せてプルサーマルと名付けられました。

Q:ウランとプルトニウムの違いは

 核分裂を起こすウラン235とプルトニウム239の違いはいろいろあります。軽水炉で用いられるウラン燃料は、ウラン235が3〜5%含まれており、残りの95%程度がウラン238です。一方、MOX燃料は、プルトニウムの割合が3〜5%程度になり、残りの95%程度がウラン238です。その性質は、95%を占めるウランの影響が大きいので、ウラン燃料とほとんど変わりません。しかし、ウランとプルトニウムは別の物質です。

 少し細かい話になりますが、原子炉の制御をするうえで、重要な物理現象に遅発中性子があります。普通は、核分裂をするとすぐに中性子が飛び出てきますが、中には、核分裂後、1秒から1分程度遅れて放出される中性子があります。これを遅発中性子と呼び、原子炉を制御するにはなくてはならない中性子です。この遅発中性子のおかげで、原子炉の応答がゆっくりとなり、運転が可能になるのです。  ウランとプルトニウムでは、核分裂で発生する中性子のうち、この遅発中性子の割合が異なります。ウラン235では0.65%程度ですが、プルトニウム239では0.21%程度です。比較すると少なく感じますが、原子炉を運転するには十分な量の遅発中性子があります。また、プルトニウムの方がウランよりも中性子を吸収する割合が大きくなります。このため、原子炉の特性がウランの場合とは若干異なります。

 上述のように、元々普通の原子炉でもプルトニウムが核分裂をしています。また、MOX燃料を原子炉で使う研究は古くから世界中で進められてきており、安全性も確認されています。日本でも、福島第一原子力発電所事故の前から、様々な軽水炉でMOX燃料を燃やすプルサーマルが進められています。事故を起こした福島第一3号機では、実際にMOX燃料が使われ、津波が来るまでは全く問題なく運転されていました。なお、事故はMOX燃料とは関係ありません。

Q:安全性はどうですか

 原子炉の安全審査では、MOX燃料を全燃料の3分の1まで使った場合の燃料の特性を評価し、安全性を確認しています。今回、高浜原子力発電所3号機も、MOX燃料を使った場合の評価を申請し、安全が十分に確認されています。高浜発電所でプルサーマルが進められると、国際的な約束を少しずつ果たすことができます。現在青森県で建設が進んでいる大間原子力発電所は、フルMOXで設計されています。普通の原子力発電所では3分の1までなのですが、大間は全ての燃料をMOXとしても安全である事が確認されています。

 なお、高速増殖炉を使う方が、はるかに効率が良く、また、使用済燃料の再利用という意味でも優れています。プルサーマルはあくまでもプルトニウム消費のためのオプションの一つと考えられます。

MOX燃料を軽水炉で燃やしプルトニウムを消費する

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