原子力なんでもQ&A(55) 

岡本孝司

エネルギーレビュー 2017年3月号54ページより転載

もんじゅ廃炉はJAEAで できるのでしょうか


技術的には可能ですが、まだ原子力規制委員会からは、日本原子力研究開発機構(JAEA)は、保守管理がちゃんとできていないと言われたままです。もんじゅは政府によって廃止が決定されました。原子力規制委員会は1年半前に、もんじゅ運転のためには、新たな組織を作るようにという勧告を文部科学省に対して行いました。保守管理ができていないということを指摘して、保守管理がちゃんとできる組織を作るようにという勧告でした。また、保守管理がきちんとできるようになるまで、使用前検査にかかる一切の業務を実施してはいけないとされています。

特に重要なのは、勧告の中で「もとより、原子炉を起動していない段階ですら保安上の措置を適正かつ確実に行う能力を有しない者が、出力運転の段階においてこれを適正かつ確実に行うことができるとは考えられない。」と書かれており、JAEAは現状でも「保安上の措置を適正かつ確実に行う能力を有しない者」と明記されていることです。このため、新しい管理のための組織を作るようにという勧告がなされたのですが、文部科学省からの回答は、JAEAが継続して任に当たるというものでした。

もんじゅに替わる運営主体については報告書を取りまとめたのですが、運営主体はJAEAのままで体制を強化することしか書かれていません。「現状でも能力を有しない」と規制委員会が指摘したJAEAによって、ある意味、運転よりも厄介な廃止措置を進めさせるそうです。政府や文部科学省、規制委員会が、皆、廃止措置についてあまりに素人なのではないでしょうか?

Q:廃止措置におけるリスクとは

廃止措置を始める第一歩は、燃料を炉心から取り出し、二度と臨界を起こさないような措置を講ずることです。このため、もんじゅと同規模の発電量を持つ軽水炉では、炉心を空にしたことを証明する書類を廃止措置計画書に添付しなくてはなりません。研究炉では、炉心に燃料が装荷されたままで廃止措置に移行することが可能ですが、それは、研究炉は一般に出力が小さく、また、燃料を取り出すよりも炉心に置いておいたほうが安全な場合があるためです。もんじゅには当てはまらないでしょう。なお、燃料が施設にある間は、運転中と同じリスクがあります。

日本原子力学会がまとめた「廃止措置の計画」という標準があります。ここには、廃止措置中におけるリスクの考え方が明記されていますが、燃料がある間は、通常運転中とほぼ同様のリスク管理をすることが明記されています。これは、使用済燃料に極めて大量の放射性物質があることによります。厄介なことには、もんじゅの場合はプルトニウムを含むMOX燃料が使われていますので、新燃料や、ほとんど運転していない燃料でも、多くの放射性物質が含まれています。このため、新燃料でも遮蔽や冷却が必要になります。

もんじゅの隣にある「ふげん」でも廃止措置が進められていますが、ここもまだ使用済燃料が燃料プールの中に保管されている状況です。本体の廃止措置は進められていますが、安全管理という意味では、使用済燃料の管理が非常に重要になっています。

もんじゅには、原子炉の炉心に燃料がフル装荷されています。もんじゅはナトリウム冷却炉なので、燃料についてもナトリウムで冷却します。このためのEVSTと呼ばれる中間的な燃料貯蔵槽がもんじゅにあります。炉心からEVSTに燃料を移送しますが、全部の燃料が入りません。このため、EVSTから、軽水炉と同様に水冷却プールに移動します。燃料はナトリウムにずっと浸かっていましたので、まずは、このナトリウムを洗い流さなくてはなりません。単純に空気中に出したり水中に入れると、ナトリウムが酸化して、量によっては爆発的な反応を起こします。燃料は、燃料棒にワイヤースペーサーが巻ついて六角形に配置される複雑な形状をしています。燃料についたナトリウムを少しずつ洗い流して、ナトリウムがない状況にしてから燃料プールに入れます。この間、非常に高い放射線にさらされますので、慎重にも慎重な作業が必要です。

この燃料取り出しが最も危険で大変な作業です。軽水炉では、廃止措置に入る前に通常運転中の管理と同じ状況でこの取り出しが行われます。もんじゅの場合も、もし正常に運転して廃止措置に移行するのであれば、事前準備として、使用済燃料の着実な管理が進められてきたと思います。残念ながら、試運転しか経験していない状況では、使用済燃料管理という厄介な作業の経験はまだまだ不十分であると言えます。 もんじゅでは、2010年8月燃料交換作業中に、原子炉容器内に燃料を落下させるという事故を起こしています。この事故は、「保守管理」のミスが原因であることが分かっています。復旧作業は2012年8月には完了し、保守管理の徹底などを含めた対策が進められてきていました。保守管理のミスをなくすべく、改善が進められてきたのですが、それでも2015年には、上記にあるように、「保守管理の能力を有しないもの」と規制委員会に認定されてしまいました。廃止措置を始める前の大きな難関の一つである使用済燃料の取り出しを「保守管理の能力を有しない」JAEAが進めることに問題はないのでしょうか?

Q:勧告の自己矛盾

 結論から言えば、JAEAには十分な保守管理能力があります。いざという時に、マニュアル通りのことしかできない組織は危険なのですが、経験と知識を持ったJAEAが、燃料取り出しや、廃止措置を進める十分な実力を持っています。しかし、原子力規制委員会に実力がありません。規制委員会の勧告の根拠となった保安規定違反は、保守管理を知らない検査官の解釈間違いによるものです。

 通常、米国等では、炉心溶融につながるリスクを集中的に指摘します。もんじゅの保安規定違反とされた検査官の解釈は、炉心溶融には全く関係ありませんので、米国の規制では、もんじゅの指摘はあり得ないでしょう。組織の問題として、10年前に「保全プログラム」を導入したときの経営陣の判断にミスがあったことは言えると思います。しかし、10年間改善を進めることで、軽水炉よりもより安全にすることができているとも言えるでしょう。

規制庁の間違いを指摘できずに、また実力もない規制委員会がリスク源です。間違った判断は、安全な原子炉を危険にすることができます。残念ながら規制委員会と規制庁には、 高速増殖炉の素人しかいません。軽水炉と同じ判断をすると、間違えることもあるのです。 勧告の「現状でも能力を有しない者」という判断が間違っているのです。ここを訂正することが必要ですが、規制委員会は訂正しないでしょう。実力のある組織ほど改善を進めて、より安全を高めていきます。実力のないものほど、ミスを撤回できません。安全文化がない、原子力規制委員会には、もんじゅの監査は無理です。法律を守ることは重要ですが、間違った解釈での監査は事故を誘発します。

Q:どうすればよいのでしょうか

 イギリスのように、もんじゅの廃止措置を行う新組織もしくは新会社を国策民営で設立します。再処理機構と日本原燃株式会社のような形です。判断ミスを繰り返してきた経営陣を入れ替えるとともに、現場の方々は、もんじゅ株式会社に移籍することで、高速炉の専門家の方々が、廃止措置に当たることができます。

 一つの大きなリスク源は、もんじゅ現場のモーティベーションです。日本の未来を救う「もんじゅ」が、いつの間にかお荷物になってしまいました。この価値観の変化を許容し納得できる人はほとんどいません。彼らのモーティベーションを維持するためにも、現場中心の国策民営会社を作るべきと思います。 また、規制委員会は実力がないので、福井県の原子力安全専門委員会を強化し、安全協定に基づいて、福井県が審査と検査を代行することではどうでしょうか? 福井大学教員や、海外規制のOB等の協力も得て、安全を重視した廃止措置を進めることが重要と思います。

経験と知識を有するJAEAに能力あり

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